少し前にNHKの「スイッチインタビュー」という番組を初めて見ました。
異なる分野で活躍する2人が、ゲストとインタビュアーを「スイッチ」しながら語り合うという番組だそうで、国立がん研究センター中央病院 精神腫瘍医の清水研さんと関ジャニ∞の安田章大さんの対談でした。
yahoo!ニュースでその二人が紹介されていた記事を読んで興味を持ったんです。
安田さんのことはテレビ東京の番組でたまに目にするぐらいで、歌っているところも見たことはありませんでした。サングラスをしていたのはファッションの一環だと思っていたんですが、違ったんですね。
2017年32歳の時に脳腫瘍の一種である髄膜種で開頭手術をして、その後遺症の影響で強い光を避けるためのサングラスなんだとわかりました。
番組は、安田さんが精神腫瘍医の清水研さんの下の本を読んで感銘を受け、清水研さんに会いたかったから対談することになったそう。
清水研さんは8年前に日本で初めてがん患者向けの「レジリエンス外来」を作った方とのこと。
「レジリエンス」とは、もともと物理学のことばで、バネが元に戻る復元力。心理学では大きなストレスにあったときに一度落ち込んでもまた戻る人の心の柔軟性を意味しているという。
私が最初に「レジリエンス」という言葉を聞いたのは、2年くらい前に東京ヤクルトスワローズのサンタナ選手が使っていたとき。ケガで離脱したとき、このことばを使っていました。回復するとか、跳ね返すしなやかさという意味なんだとそのとき知りました。
安田さんは病気になって、そして入浴中に術後てんかんになって骨折し、死にそうになったこともあって、できることができなくなったりしたことで一時は絶望したけど、この「レジリエンス」を体験したそう。
この対談で心に残ったのは下の安田さんのことば。
「1回ガッツリ折れて、ムカついて、怒って、泣いて、だけど吐き出さなければ変われなかった、吐き出して変わった、いっぱい泣いたから変わった、いっぱい泣き崩れて立ち直れなくなるまで行ったから変わるきっかけになった」
それに対して清水研さんが言ったのは
「負の感情は実は大切な役割がある。悲しみは心の傷をいやす。怒りは自分が大切なものを守る。不安は将来に備えるための感情。それを押し込めるんじゃなくて、その感情と向き合っていくうちにその事実を認めることができるようになる。そうすると、そのあとどう考えたら人生を充実できるのか?どういう風に生きたいのか?ということを突き詰めて考えられるようになって、そこから新しいところに行ける」と。
私が乳がんだと診断された時は、腋のリンパ節にも広がっていたし、もちろん怖かったけど、泣きませんでした。昔から喜怒哀楽、いろんな感情を表に出せないで生きてきちゃった。若いころパニック障害みたいになってから、パニックを起こさないようにずっと気持ちを抑えるように生きてきたからかな。
私は自分で乳がんを疑い始めてから、ほかの乳がんを患った人たちのブログは読みませんでした。怖くなるので。治療が終わったあと自分がブログを始めたことで、ほかの人がどんなふうにブログに書いているのかを知りたくて、ほかの人のブログを読み始めました。その中では、乳がんだと告知されたときは人目もはばからず泣きながら家に帰ったとか書かれてあって、泣かなかった自分はおかしいのかななんて思ったりして。
私の場合、右胸を全摘手術したり、抗がん剤治療を受けたりということはあったけど、手術は安田さんみたいに頭を開ける手術ではなく、いわば体の表面だし、抗がん剤治療では髪の毛が抜けたりといった副作用はあったものの、吐き気があって苦しいとかそういうこともなく、少しずつ少しずつ回復していきました。
結果的に私は病気になっても、安田さんのような「レジリエンス」は体験できませんでした。
もっと泣いて泣いて怖さや悲しさを表に出していったら変わっていけたのかな。自分を変えるチャンスを逃しちゃったのかなとかそんな自分がダメだなって思ったりして。
番組の中で清水研さんが言っていたのは、がん患者に多いのは、「こうあらねばいけない」という「must思考」が強い人。人に迷惑をかけてはいけないとか頼ってはいけないとか思う人は、病気になったことで、そういう自分が許せなかったり、ダメだな変われないなって思うかもしれない。でも、悩んでいる自分を憎むんじゃなくて、肯定できるようになったら、そこからがスタートだと。
私もそういうところがあったので、こういう風に考えればいいのかなあと思わせてくれました。そこから変わっていければそれが私の「レジリエンス」かな。
安田さんが感銘を受けたという清水研さんの本をいつか読んでみようかなって思いました。
ではまた。